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金融商品の手数料開示

個人投資家にとって投資する金融商品にかかる手数料は非常に大切である。昨今の不透明な世界経済状況・投資環境の中、なかなか安定的に利益を上げられない一方で、毎年、確実に数%取られる手数料は、運用成績を左右する大きなファクターであることは疑いの余地がないからである。

株式の売買における委託手数料や投資信託の購入時手数料は、インターネット環境の普及や金融機関同士の競争が広まる中、安くなる傾向にあります。購入時手数料がかからないノーロード投信も珍しくありません。また、ETF(上場投資信託)にいたっては、売買時に株式同様の委託手数料はかかるものの、保有期間中に発生する信託報酬が年率0.5%以下と非常に低い銘柄もあり、長期保有を念頭にした若年層の資産形成にうってつけの金融商品であると当方は考えています。

当然のこととして、金融商品を選ぶ際、手数料が安いことに越したことはありませんが、投資を検討している商品の手数料項目や料率の情報が、しっかり開示されているかどうかをあらためて確認してみたい。

 

例として投資信託(公募株式投資信託等)の主な手数料項目を以下に整理してみた。

●購入時手数料・・・消費税抜きで購入金額に対して、1%〜3%台の料率が多い

※販売会社によるが、インデックスファンドはノーロードが主流(ネット証券)

●信託報酬・・・運用残高に対して年率0.5%前後〜2%程度が多い

※信託報酬は、日割り計算した報酬を日々、運用残高から控除される

●信託財産留保額・・・0.1%から0.3%程度の手数料が解約、換金時に発生する

※近年は、そもそも信託財産留保額かからない設計の投信が増加傾向である

 

投資信託の目論見書によると、その他にも各種手数料(監査費用や書類作成費用等)が発生すると開示されているが、上記3つの手数料が大半を占めると考えて良いでしょう。

投信信託に対しては、手数料項目の多さ、料率の高さから「あまりの高コストゆえ、金融商品としての魅力はそもそもない」という意見も多い(当方もある程度その考えにくみします)が、本稿の趣旨である手数料内容・費用開示という観点でいえば、投信信託は、一応合格点はあげられるのではないでしょうか。

 

さて、今回考えたいのは、生命保険商品にかかる手数料開示についてです。生命保険が金融商品にあたるかどうかの議論(変額年金そもそも運用の中身は投信信託であるし、終身保険や養老保険も長期の貯蓄・資産形成に資する保険だと考えれば、金融商品であると当方は考えます)はさておき、保険料の内訳がどうなっているのか、各保険会社による情報開示はどうなっているのかを考えてみたい。

 

一般的に、契約者が支払う保険料は、将来の保険金支払いの原資である純保険料と、保険会社の運営経費である付加保険料に分けられる。

保険料 = 純保険料 + 付加保険料

 

この付加保険料には、営業職員や保険代理店への手数料や、保険会社の利益などが含まれているため、保険料の内訳や情報の開示は、業界的にタブーとされている。つまり、先に挙げた投資信託と比べると、生命保険は情報開示に関しては、非常に劣っているといえよう。

 

その生命保険会社の後ろ向きの状況開示姿勢・閉鎖性に一石を投じる出来事が2008年に起きた。

 

200811月に、インターネット専門の保険会社であるライフネット生命保険が、“保険料の原価”の全面開示に踏み切ったのである。他の大手生命保険会社の幹部は一様に「なんで開示したのか?」「余計なことをしてくれた」といら立ちをあらわにしたといった内容の新聞報道の記事(当時)を思い出します。

 

開示は業界ではタブーとされてきた。確かに「自動車や家電製品も原価を開示していない」(大手生保)というように、保険料の内訳つまり原価を開示しなければならないものではない。

ではなぜ、開示に踏み切ったのか。ライフネット生命の社長は「クルマや電化製品などと違い、保険は見たり触れたりできない。また一部の商品を除いて手数料も開示されておらず比較しづらい。そこで保険会社間で差が大きい付加保険料を開示すれば競争が進むと考えた」とその理由を説明していました。インターネット専業で、営業職員が基本的にいない身軽なライフネット生命だからこそ開示に踏み切れたといえるでしょうか。

さて、そもそも付加保険料にはどれほどの差があるのか。

例えば、30歳男性の死亡保険金3000万円の定期保険(期間10年)に支払う年間の保険料は、ライフネット生命が約4万円(純保険料約3万円と付加保険料約1万円)で、某大手生保は約8万円。その差は2倍だが、付加保険料だけで比べれば、差は5倍に広がる。というのも、同じ日本人が保険の対象のため、原価である純保険料はほぼ同額であり、他生保でも純保険料は約3万円となる。つまり、先の大手生保の付加保険料は約5万円となり、ライフネット生命の約1万円の5倍に相当するというわけである。

死亡保険である定期保険の例を示したが、保険業界において相対的に存在感が増した医療保険(がん保険)については、保険事由発生に用いる統計やリスク細分化による引き受け基準等が保険会社によって異なるため、純保険料自体に差が出るケースも少なくないと思われるが、ネット専業と大手では付加保険料で数倍の開きがあるのではと容易に想像できる。

 

ただでさえ収益が悪化している生保各社にとっては、価格引き下げ競争になりかねない付加保険料の開示は避けたい事態であろう。そのため「余計なことをしてくれた」と怨嗟の声が上がっている。だが、金融商品の手数料開示は世界的な流れであり、いつまでも非開示のままでは済まされないであろう。

 

2012年現在、ライフネット生命に追随して、保険料の原価を開示する保険会社は現れていません。大手生保の立場に立てば「保険料の原価はそんなに単純なものではない」「既契約者へのアフターフォローにも経費がかかる」という声が聞こえてきそうです。まあ、そのような言い分があれば、むしろ情報開示を徹底して、しっかりと反論をしてもらいたいものです。

at 19:56, gmoneylife, -

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