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自社株保有は愛社精神!?

 

大手上場企業の多くでは社員持ち株会制度やそれに類似した制度があります。私は、かつて一部上場企業に勤めておりましたので社員持ち株会制度は利用可能でしたが、20歳代の頃で資産形成に対する意欲が薄かったせいか、または給与天引きによる毎月の買い付けのためか、前向きに自社株を持とうという気分になれませんでした。本音では「自社株を買うくらいなら、自己啓発や資格取得のためにお金を使おう」と考えていたのでしょう。愛社精神がなかったとも言えますね。

 

FPとして顧客の相談を受けていると、勤務先の自社株を社員持ち株会制度で保有されている方を良くお見受けします。年齢層は40歳代後半から50歳代が多く、取得に要した金額は数百万円〜1000万円近くになるケースもありました。昨今の株式市況の低迷を考えれば、含み損失は相当な金額になっているでしょう。

 「持株会による毎月の買い付けはすでに止めているが、この株式をどうしたら良いでしょうか?」という相談を、先日、老後資金準備を検討されている顧客から受けました。

 

おおまかに計算すると約15%の含み損失で、金額にすると200万円程度のマイナス。持株会の規定にもよるが、原則として自社株の売却は自由にはできないのが一般的。役員であろうと一般社員であろうと、その会社のインサイダーである以上、自由には自社株を売却することはできないというのが一般的です。ただ、その相談者は、来年3月には会社を早期退職することをライフプランとして想定していました。よって、「損失は承知の上で、退職を機に持株会を退会、時価で保有株を持株会に買い取ってもらうことで宜しいのでは」というのが私の回答でした。近年の株価低迷で、その方は結果的に長年にわたる自社株保有で損失を被りました。もう数年退職時期を延ばせば、もしかしたら会社の業績アップや株式市況の回復があって、その方は最終的に社員持ち株会制度の利用で利益を得られたかもしれません。でも、退職金とともに、少なくとも自社株の処分・清算により使える資金を1000万円程度、別途受け取るわけですから、ネガティブに考える必要もないでしょうか。

 

さて、会社員が勤務先の自社株を持つことはどういう意味を持つのかについて少し考えてみました。「高度経済成長を背景に会社の業績が伸び、それにともない自社株の株価も大幅に上昇する」というかつてのシナリオは、これからは望めないかもしれません。もちろん、近年活気のあるソーシャルゲーム業界等の新興企業であれば、業績の伸びと自社株の株価上昇は大いに期待はできるのでしょうけれど。

しかし、リスク分散の観点で考えれば、会社員が自社株を保有することは合理的とは思えません。もし、中高年のサラリーマンにとって、勤務する会社が破たん・倒産することになれば、収入と職場と資産を一度に失い、家族が路頭に迷うことになりかねません。まさにリスクが勤務する会社に集中した故の悲劇といえるでしょうか。

過去、このような悲劇は実際に起きています。印象的なケースは、1997年自主廃業の発表に至った際の山一證券の社員の社員持株会での自社株投資でしょう。まさに、職場と収入と資産の大半を同時に失った者が多くいたと思われます。でも、彼らは、証券会社の社員なのだから、リスクの集中は「自己責任だ」と言うしかありませんね。

 

自社株についていえば、最近注目に値するニュースがありました。米国のFB(フェイスブック社)が、94NY株式市場の引け後に、米証券取引委員会(SEC)への報告で、同社株最大の保有者ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が「少なくとも今後12カ月は保有FB株売却の意思はない」と述べていたことが判明しました。この報道後、同社株は反騰して18ドル台を回復しました。とはいっても、公開価格38ドルを大幅に下回る株価水準で低迷していますが。市場の受け止め方としては「マーケットや株主に対してフレンドリーではないと言われた同CEOが初めて株主の方を向いた発言」と注目されたようです。

一方で「創業者CEOであれば10年、あるいはそれ以上の期間、保有し続けると明言してほしかった」との声も多くあったようです。

 

いずれにしても、会社員や創業者を含む経営陣にとって、自社株を保有するということは、純粋に資産運用や資産保有の一つとして捉えるより、「愛社精神」を示す行為に他ならないといえるでしょうか。

at 22:24, gmoneylife, -

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